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CREATURES / AQUATIC INSECTS

水生昆虫

田んぼや池、川のふちなど、奄美の水辺にひっそりと暮らす小さな生き物たち。ゲンゴロウ、ドロムシ、アメンボ――じっくり探すと出会える種類を紹介します。

図鑑ページについて

種類がとても多く、専門的なグループも多いジャンルのため、このページでは写真や情報が集まった種類から少しずつ図鑑形式で紹介しています。写真や名前をクリックすると、それぞれの詳しいページを見ることができます。

水生昆虫は繊細で、種類によっては生息数が少ないものもいます。観察は水辺からそっと行い、採集する場合も持ち帰る数は最小限にとどめましょう。

奄美で出会える水生昆虫

ゲンゴロウの仲間

チンメルマンセスジゲンゴロウ
チンメルマンセスジゲンゴロウ
ゲンゴロウ科セスジゲンゴロウ亜科チンメルマンセスジゲンゴロウ Austrelatus zimmermanni (Gschwendtner, 1934)

体長5.3〜5.5mmほどの小さなゲンゴロウの仲間。日本・朝鮮半島・中国に分布するが、産地は局地的で、佐賀県や秋田県などのレッドリストで絶滅危惧II類に選ばれている。長くセスジゲンゴロウ属(*Copelatus*)に含められてきたが、2026年に発表された論文で、DNAの解析と形の比較からオーストラリア区を中心に分布する *Austrelatus* 属へ移された。奄美大島からは2018年に初めて記録されている。同じ論文では、南大東島と宮古島の個体群が別の亜種として記載されている。雨の後にできる水たまりのような、すぐに干上がる小さな水場にもすむ。卵から成虫になるまでが39〜61日と短く、そうした不安定な水場でも一生を終えられると考えられている。

フタキボシケシゲンゴロウ
フタキボシケシゲンゴロウ
ゲンゴロウ科キボシケシゲンゴロウ属フタキボシケシゲンゴロウ Allopachria bimaculata (M.Satô, 1972)

種小名(「二紋の」の意)の通り上翅に2つの斑紋を持つとされる、極小のゲンゴロウの仲間。近縁種と比べて体が小さく、頭部表面の微細な網目模様が不完全な点で区別されるという。トカラ列島から奄美群島、沖縄島にかけての南西諸島に分布し、環境省の昆虫類レッドリストで準絶滅危惧(NT)に指定されている。詳しい生態や形態についての一次資料は乏しい。

環境省レッドリスト:準絶滅危惧(NT)
コガタノゲンゴロウ
コガタノゲンゴロウ
ゲンゴロウ科ゲンゴロウ属コガタノゲンゴロウ Cybister tripunctatus lateralis (Fabricius, 1798)(日本産にはorientalis Gschwendtner, 1931の名も長く使われてきた)

体長24〜29mm。本州、四国、九州、南西諸島、小笠原諸島に分布し、国外では中国、朝鮮半島、台湾にも生息する。長卵形でやや扁平、背面は緑色から褐色を帯びた黒色で強い光沢があり、上翅の縁に黄色いふちどりが入るのがトビイロゲンゴロウとの見分けのポイント。水草の豊富な池沼や湿地、水田やその周辺の水たまり、休耕田、流れの緩やかな水路に生息する。1960年代以降、農薬の使用や圃場整備によって本州以南で激減し環境省レッドリストの絶滅危惧II類に指定されているが、南西諸島では比較的普通に見られる。

観察期 4〜9月
環境省レッドリスト:絶滅危惧II類(VU)
オキナワスジゲンゴロウ
オキナワスジゲンゴロウ
ゲンゴロウ科シマゲンゴロウ属オキナワスジゲンゴロウ Hydaticus vittatus (Fabricius, 1775)

体長11〜14mm。屋久島以南の南西諸島に分布し、国外では台湾、中国、東南アジアにも生息する南方系のゲンゴロウ。水生植物の豊富な池沼や水田などの止水域に生息する。生息環境の減少に加え、ゲンゴロウ類は近年飼育目的とみられる販売が多く確認されていたことから、2023年1月に他のゲンゴロウ類とあわせて特定第二種国内希少野生動植物種に指定された。この区分は販売・頒布目的の捕獲・譲渡のみを規制するもので、観察目的の採集そのものは規制対象外。同属のスジゲンゴロウ(本州以西に分布)によく似るが、分布域が異なるため見分けやすい。

観察期 4〜9月
販売・頒布目的の捕獲等禁止(特定第二種国内希少野生動植物種)
写真準備中
トビイロゲンゴロウ
ゲンゴロウ科ゲンゴロウ属トビイロゲンゴロウ Cybister sugillatus Erichson, 1834

体長18〜25mm。日本国内では南西諸島(中之島以南)・大東諸島に分布し、国外では中国、台湾、東南アジア、南アジアにも生息する。クロゲンゴロウによく似るが、体形はやや細い卵型で、背面は光沢のある緑色から黒褐色。南西諸島に分布する近縁種(フチトリゲンゴロウ・ヒメフチトリゲンゴロウなど)の中では、比較的個体数が安定しているとされる。水生植物の豊富な浅いため池や放棄水田などに生息する。

観察期 4〜9月
ウスイロシマゲンゴロウ
ウスイロシマゲンゴロウ
ゲンゴロウ科シマゲンゴロウ属ウスイロシマゲンゴロウ Hydaticus rhantoides Sharp, 1882

体長10〜11mm程度の小型のゲンゴロウ。前翅は全体的に黄褐色で、目立つ縞模様は無い。本州(関東地方以西)・四国・九州・対馬・南西諸島・大東諸島に分布し、国外では中国、台湾、東南アジアにも生息する。水田や池沼などの開けた止水域に生息する。南西諸島のゲンゴロウの中では、トビイロゲンゴロウ・コガタノゲンゴロウとともに比較的健在な種とされる。

観察期 4〜9月

ヒメドロムシの仲間

アカハラアシナガミゾドロムシ
アカハラアシナガミゾドロムシ
ヒメドロムシ科アシナガミゾドロムシ属アカハラアシナガミゾドロムシ Stenelmis hisamatsui M. Satô, 1960

奄美群島・沖縄諸島とグアムに分布する小型の水生甲虫。ヒメドロムシ科は主に清流に生息し、幼虫・成虫ともに水中で暮らす体長5mm前後までの甲虫のグループで、水のきれいな川の指標としても注目される。本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

アマミハバビロドロムシ
アマミハバビロドロムシ
ヒメドロムシ科ハバビロドロムシ属アマミハバビロドロムシ Dryopomorphus amami Yoshitomi & M. Satô, 2005

奄美大島だけに分布する固有種で、2005年に記載された。同じハバビロドロムシ属には、本州・四国・九州のハバビロドロムシとヒメハバビロドロムシ、大隅諸島のヤクハバビロドロムシがいる。ヒメドロムシ科は主に清流に生息する小型の水生甲虫のグループだが、本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

アマミミゾドロムシ
アマミミゾドロムシ
ヒメドロムシ科ミゾドロムシ属アマミミゾドロムシ Ordobrevia amamiensis amamiensis (Nomura, 1957)

奄美大島に分布する小型の水生甲虫(基亜種)。沖縄島・伊平屋島の個体群は別亜種オキナワミゾドロムシ(*O. a. okinawana*)として区別されており、人為的に移入した個体群がグアムでも見つかっている。ヒメドロムシ科は主に清流に生息するグループだが、本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

観察期 7〜8月
アマミヨコミゾドロムシ
アマミヨコミゾドロムシ
ヒメドロムシ科ヨコミゾドロムシ属アマミヨコミゾドロムシ Leptelmis torikaii Kamite, Yoshitomi & Hayashi, 2017

奄美大島だけに分布する固有種で、2017年に記載されたばかりの新しい種。日本本土や台湾にいる同属他種とは形態が異なる一方、交尾器の形状などが中国南部に分布する種と酷似しており近縁関係にあることがわかっている。もともとユーラシア大陸に広く分布していた祖先種のうち、奄美大島の孤立後に他地域の近縁個体群が絶滅し、本種だけが生き残ったと考えられる「遺存固有種」の一例とされる。ヒメドロムシ科は主に清流に生息する小型の水生甲虫のグループだが、本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

観察期 1〜12月
ナガツヤドロムシ
ナガツヤドロムシ
ヒメドロムシ科ツヤドロムシ属ナガツヤドロムシ Zaitzevia elongata Nomura, 1962

奄美群島と沖縄諸島に分布する小型の水生甲虫。ツヤドロムシ属は日本に8種が知られ、種によって本州から八重山諸島まで分布域が異なる。ヒメドロムシ科は主に清流に生息するグループだが、本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

ノムラヒメドロムシ
ノムラヒメドロムシ
ヒメドロムシ科アシナガミゾドロムシ属ノムラヒメドロムシ Stenelmis amami Yoshitomi et Hayashi, 2021

奄美群島・沖縄諸島に分布する小型の水生甲虫。もともとはノムラヒメドロムシ属(Nomuraelmis)の唯一種とされていたが、2021年の分子系統解析(Kobayashi et al., 2021)によりアシナガミゾドロムシ属(Stenelmis)に統合された。属名(Nomuraelmis)および和名は、佐藤正孝博士が1964年に命名したもので、同時代に日本のヒメドロムシ科研究を切り拓いた野村鎮博士にちなむと考えられている。本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

観察期 12〜2月
リュウキュウムナビロツヤドロムシ
リュウキュウムナビロツヤドロムシ
ドロムシ科ムナビロツヤドロムシ属リュウキュウムナビロツヤドロムシ Elmomorphus amamiensis Nomura, 1959

奄美大島・沖永良部島に記録がある小型の水生甲虫。かつては本州以西に分布するムナビロツヤドロムシの琉球列島亜種 *Elmomorphus brevicornis amamiensis* として扱われていたが、2014年にCOI遺伝子解析と形態比較による研究で両者の間に種レベルの大きな遺伝的分岐が確認され、独立種に格上げされた。現在はムナビロツヤドロムシとは別種とする見解が定着している。ドロムシ科はヒメドロムシ科と近縁なグループで、同じく清流に生息する。本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

観察期 1〜12月
サトウカラヒメドロムシ
サトウカラヒメドロムシ
ヒメドロムシ科カラヒメドロムシ属サトウカラヒメドロムシ Sinonychus satoi Yoshitomi & Nakajima, 2007

奄美群島・沖縄諸島(沖縄島では記録なし)に分布する小型の水生甲虫で、2007年に記載された。カラヒメドロムシ属は日本に2種のみが知られ、もう1種のキュウシュウカラヒメドロムシは九州に分布する。本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

観察期 4月
ウエノツヤドロムシ
ウエノツヤドロムシ
ヒメドロムシ科ウエノツヤドロムシ属ウエノツヤドロムシ Urumaelmis uenoi uenoi (Nomura, 1961)

屋久島から奄美群島、沖縄諸島にかけて分布する小型の水生甲虫(基亜種)。ウエノツヤドロムシ属には2020年に九州から新種記載されたカエンツヤドロムシ(Urumaelmis flammea)もおり、日本には本属2種が知られている。トカラ列島口之島の個体群は別亜種トカラツヤドロムシ(*U. u. tokarana*)として区別されている。本種自体の詳しい生態についてはまだ分かっていないことが多い。

観察期 12〜2月

アメンボの仲間

アマミオヨギカタビロアメンボ
アマミオヨギカタビロアメンボ
カタビロアメンボ科オヨギカタビロアメンボ属アマミオヨギカタビロアメンボ Xiphovelia curvifemur Esaki & Miyamoto, 1959

奄美大島・徳之島・沖縄島の南西諸島に分布する小型のカタビロアメンボ。近縁種オヨギカタビロアメンボは、樹林に囲まれた谷池の汀線部にある石礫や岩盤質の場所を好み、水面の植物片や汀線の石礫上で卵越冬することが確認されているが、本種固有の生態についてはまだよく分かっていない。なお、環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されているのは近縁種のオヨギカタビロアメンボであり、本種(アマミオヨギカタビロアメンボ)とは別種なので混同しないよう注意が必要である。本種自体は同レッドリストに掲載されていない。

観察期 1〜12月
チャイロケシカタビロアメンボ
チャイロケシカタビロアメンボ
カタビロアメンボ科ケシカタビロアメンボ属チャイロケシカタビロアメンボ Microvelia japonica Esaki & Miyamoto, 1955

体長1.5〜2.1mmほどの小型の水生昆虫。本州(福島県以西)・四国・九州、南西諸島では喜界島から沖縄島にかけて分布する。細流脇の薄暗い水たまりや石の陰などでよく見られ、水面に落ちた小さな昆虫を捕食する。

観察期 1〜12月
イリオモテケシカタビロアメンボ
イリオモテケシカタビロアメンボ
カタビロアメンボ科ケシカタビロアメンボ属イリオモテケシカタビロアメンボ Microvelia iriomotensis Miyamoto, 1964

体長1.7〜1.9mmほどの小型の水生昆虫。南西諸島(奄美群島〜八重山諸島)と台湾に分布する。山間の林道脇の染み出しでできた水たまりなどで見られ、オスがメスを長時間ガードする配偶行動が学術研究で報告されている。

観察期 1〜12月
ケシカタビロアメンボ
ケシカタビロアメンボ
カタビロアメンボ科ケシカタビロアメンボ属ケシカタビロアメンボ Microvelia douglasi Scott, 1874

体長1.5〜2mmほどで、カタビロアメンボの仲間の中でも最小クラスの水生昆虫。本州・四国・九州・対馬・南西諸島・大東諸島(南大東島)に分布し、国外でも朝鮮半島から中国・東南アジア・台湾・オセアニアまで広く見られる。小さな水田や細流など流れのある水辺を好み、水面に落ちた小さな昆虫を捕食する。カタビロアメンボ科には飛べない無翅型と飛べる長翅型がいる。

観察期 1〜12月
コセアカアメンボ
コセアカアメンボ
アメンボ科アメンボ属コセアカアメンボ Gerris gracilicornis (Horváth, 1879)

体長11〜16mmほどの、赤褐色を帯びた大型のアメンボ。北海道から本州・四国・九州・南西諸島まで日本各地に広く分布し、池沼や河川、湿地など、特に水温の低い水域を好む。成虫のまま陸上で越冬し、目覚めた後に新たな水辺へ飛んで移動する習性があり、春先の小さな水たまりなどで見られることが多い。

観察期 1〜12月
ツツイナガレカタビロアメンボ
ツツイナガレカタビロアメンボ
カタビロアメンボ科ナガレカタビロアメンボ属ツツイナガレカタビロアメンボ Pseudovelia tsutsuii Esaki & Miyamoto, 1955

南西諸島(宝島〜沖縄島)に分布する。ナガレカタビロアメンボ属は日本に数種が知られ、河川や池の岸辺に生息するグループ。本種自体の詳しい生態についてはまだ十分な情報が確認できていない。

観察期 1〜12月

ミズムシの仲間

アマミコチビミズムシ
アマミコチビミズムシ
チビミズムシ科チビミズムシ属アマミコチビミズムシ Micronecta japonica Chen, 1960

体長1mm前後の極小の水生カメムシ。南西諸島(奄美大島・徳之島)に分布する日本固有種で、同属には北海道から九州まで広く分布するコチビミズムシ(*Micronecta guttata*)など近縁種が複数知られている。普段は砂や落ち葉の下に潜り、驚くと素早く泳いで逃げる。

観察期 1〜12月
アシブトメミズムシ
アシブトメミズムシ
アシブトメミズムシ科アシブトメミズムシ属アシブトメミズムシ Nerthra macrothorax (Montrouzier, 1855)

体長約1cm、幅広く扁平な体をした、日本産アシブトメミズムシ科唯一の種。単眼を持たず、太い鎌状の前脚が特徴。名前に「ミズムシ」とあるが池沼の水中に暮らす種ではなく、海岸の砂浜(汀線から海岸林の間)で夜間に活動し、ワラジムシやダンゴムシの仲間を捕食する半陸生の待ち伏せ型捕食者で、成虫のまま冬を越す。南九州から南西諸島、小笠原諸島まで広く分布し、奄美大島だけの固有種ではない。

観察期 1〜12月
エグリタマミズムシ
エグリタマミズムシ
タマミズムシ科タマミズムシ属エグリタマミズムシ Heterotrephes admorsus Esaki & Miyamoto, 1959

体長2.5〜3mmほどの半球形の小さな体を持つ、日本産タマミズムシ科唯一の種。マツモムシと同じく腹面を上にして泳ぐ。奄美大島・徳之島にのみ知られる奄美群島固有種で、流れの緩やかな河川で、陸から水中に垂れ下がった植物の根がある場所などに生息する。環境省の昆虫類レッドリストで絶滅危惧II類(VU)に指定されている。

観察期 1〜12月
環境省レッドリスト:絶滅危惧II類(VU)

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